曙綜合法律事務所 AKEBONO LAW OFFICE

事務所通信
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裁判手続きのIT化(大森公貴弁護士)

こんにちは。弁護士の大森公貴です。

連日、コロナ関連の報道が続くなかで、不要不急の外出制限やリモートワーク(テレワーク)等が推奨されております。

私も、なるべく外出は控え、また自宅でのリモートワークの準備を徐々に進めておりますが、裁判所が閉鎖しない限り、裁判期日には裁判所に出頭する必要がありますので、完全にリモートワークに移行することは難しい状況です。

 

さて、このリモートワークに関連して、裁判手続きにも近時大きな動きがありました。それが、タイトルに書きました、「裁判手続きのIT化」です。

この「裁判手続きのIT化」というのは、民事訴訟手続をインターネットなどを活用して実施することで、すでに今年の2月から、東京地方裁判所を始めとする一部の裁判所では試験的な運用が始まっています。

現在の民事訴訟手続きでは、原則として、紙媒体の書面や証拠を作成し、それを裁判所と相手方に、持参、郵送またはFAXで提出するという方法をとっています。最近は、電子データをそのまま証拠(CD-Rなど)として提出することも増えてきましたが、やはり基本は紙に印刷したものを提出することとなっています。

 

新しく始まる制度では、このような書面や証拠の提出方法がオンライン提出に一本化すること等も含まれています。これが実現すれば、現在の運用は大幅に変わることになります。

なお、裁判手続きのIT化の主な内容には、この書面や証拠のオンライン提出等(「e-Filing」)以外にも、裁判期日におけるウェブ会議の実施(「e-Court」)や、裁判所が管理する事件記録をオンライン上でアクセスできるような制度(「e-Case Management」)も含まれており、今後段階的に実施されることが予定されています(これは、2020年代の早い時期にすべて実施されるとの予想もあります。)。

 

ちなみに、私が、昨年2月頃にこの事務所通信で、「そのうち日本も、裁判手続きが電子化されるのでしょうか」とつぶやいていましたが、まさかそれから1年あまりで運用が開始されるとまでは想像していませんでした。

ただ、この裁判手続きのIT化について、諸外国の動きを見ると、例えば、アメリカでは、1990年代前半から、また、アジアでも、シンガポールでは1998年から、韓国では2011年から「e-Filing」の取り組みは始まっていたそうで、国際的に見ると、日本の取り組みは遅れているとの評価が多いようです。

 

この裁判手続きのIT化は、昨今推奨されているリモートワークの推進や紙資源の節約、郵送費用の削減等により、国民の司法制度利用の利便性に資するというメリットがある一方で、ITに不慣れな市民にとっての不都合性や電子データの改ざん、サイバー攻撃のおそれ等の問題もあり、検討課題はまだまだあります。

私も、訴訟(もっぱら代理人弁護士を付けない本人訴訟ですが)を通じて、手書きの書面を見かけることがあり、今現在、必ずしも誰もがIT化に対応できるわけではないと実感しています。

 

(余談ですが、今のようにパソコンが普及する以前は、弁護士が作成する書面も手書きでした。私も、過去(平成の初期頃)の訴訟記録の中で、数十頁に亘る手書きの書面を見たことがあり驚いたことがあります。)

 

話を戻しますが、様々な課題はあるものの、今後、この「裁判手続きのIT化」の動きが進んでいくことは間違いありません。私たち弁護士も、このような動きに取り残されないよう、対応しなければと思う次第です。

 

なお、当事務所でも、ウェブ会議についてはすでに取り入れておりますので、ご来所が困難な場合等には、ご相談ください。