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事務所通信
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会社法改正(社外取締役義務化)について (千葉理弁護士)

法務大臣の諮問機関である法制審議会の会社法部会は本年1月16日に,上場企業などの大会社に社外取締役の設置を義務付けることを盛り込んだ会社法制見直しの要綱案が取り纏められ,2月14日には,法制審議会総会において採択され,法務大臣に答申されました。今後法務省は会社法改正案など関連法案について,秋の臨時国会提出を目指すこととなっています。

 

現行会社法では,上場会社等が社外取締役を置いていない場合には,定時株主総会において「社外取締役を置くことが相当でない理由」に関する説明義務を課す(327条の2)等が定められ,完全な義務化が規定されていませんでした。そして現行会社法附則25条(検討条項)では,現行法施行後2年経過した場合に,社外取締役を置くことの義務付け等の措置を講ずる必要があるか否かについて検討するものとされており,上記の流れは,この定めに基づいて社外取締役を置くことの義務付けに関する検討がなされた結果となります。

 

平成30年7月現在の社外取締役の選任状況に関しては,東京証券取引所に上場している会社のうち,社外取締役を選任している会社の比率は,全上場会社では97.7%,さらに市場第一部においては99.7%に達しています。また,コーポレートガバナンス・コードにおいて,東京証券取引所市場第一部及び同第二部の上場会社は,2名以上の独立社外取締役の選任をしない場合にはその理由を説明することが求められているように,現在,上場会社においては,社外取締役を置くことは標準的となっています。

 

このような状況において,今回の要綱案は,社外取締役の選任について法律をもって義務化すると共に,その対象を,上場企業のみならず,監査役会を置くなどの条件を満たす大企業(資本金5億円以上または負債額200億円以上)とするもので,法律に明記することで投資家にコーポレートガバナンス(企業統治)強化をアピールする狙いがあります。

 

社外取締役は,第三者の視点から客観的に経営をチェックする役割が期待され,特に,日産自動車,スルガ銀行などの相次ぐ企業不祥事を受け,社外取締役が機能することが強く期待されています。

 

このように,今回の要綱案では,大会社(資本金5億円以上または負債額200億円以上)を対象に社外取締役の選任の義務化が検討されています。しかし,大会社以外の相当規模の会社においても,我が国の産業構造におけるその存在価値に鑑みれば,社外取締役による客観的な視点によるガバナンス機能を発揮されることによる企業価値の向上を目指すべく,今後,社外取締役の選任を検討することが期待されるものと考えます。