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最近の読書事情(大森公貴弁護士)

 書籍や文書などの電子化の流れを受けて電子書籍リーダー(Amazon Kindle)というものを約3年前に購入しました。3年ほど使ってみた感想としては、電子書籍に適しているものとそうでないものがあるように感じています。最近はデジタル教科書の導入の検討が進んでいますが、私の実感としては教科書や実用書などは紙の方が読みやすいように思います。
 結局、私は、小説や漫画などは電子書籍で、実用書やビジネス書などは紙の本で購入するといった使い分けをしています。
 さて、そこで最近読んだ本の中で印象深かったものをいくつかご紹介いたします。
 
「法律における理屈と人情」(我妻栄著 日本評論社)
 この本は法律の専門書ではなく、誰でも読みやすい内容です。我妻栄という民法の著名な学者(すでにお亡くなりになられています)の講演内容が書籍化されたもので、表題作「法律における理屈と人情」もさることながら、もう1つの収録作「家庭生活の民主化」もとてもおもしろいです。
 我妻先生は明治民法から現行民法に変わるときに、民主主義の普及に向けた啓蒙活動の一環としていろいろな所で講演をされていたそうなのですが、後者の収録作を読むと、当時の一般的な日本人の男女観や家庭観などが、今のそれとはだいぶ異なっていたことがよく分かります。例えば、日本とアメリカの台所事情の違いを説明する中で、「男子厨房に近づかず」という言葉が出てくるのですが、最近はほとんど聞かなくなったように思います。
 近年、選択的夫婦別姓制度の導入の可否などが議論されていますが、婚姻制度や家族の在り方などを今一度考える上でとても参考になります。
 
「武士道」(新渡戸稲造著 岬龍一郎訳 PHP文庫)
 この本は、著者がある外国の学者に、「日本の学校では宗教教育がない中でどのようにして道徳を教えるのか」、と問われたことをきっかけに書かれたものだそうです。確かに、日本人の道徳観や倫理観、アイデンティティというものはあまりはっきりしないように思います。特に現代は価値観が多様化している社会ですから、私自身、仕事をしていてもまた日常生活においても、いわゆる社会通念とか常識というものの判断に迷いが生じることが多々あります。
 近年、小中学校において道徳が教科化され、道徳教育の位置づけが変わりつつありますが、日本人の道徳観や価値観などを考える上で興味深い1冊です。
 
「オメラスから歩み去る人々」(アーシュラ・K・ル・グィン作「風の十二方位」より ハヤカワ文庫SF)
 短編SF作品で、作者は「ゲド戦記」などでも有名な方です。
あるユートピアのような都市「オメラス」の繁栄が1人の人間の犠牲との引き換え(契約)により成立しており、その犠牲者を救済するとその都市の繁栄は崩壊してしまうという設定の物語です。現実社会における「最大多数の最大幸福」とか、「公共の福祉」といった理念等について考えさせられる一作です。ちなみにこの作品は電子書籍化されています。
 
「BEGIN」(池上遼一(画)史村翔(作)小学館)
 池上遼一氏は「サンクチュアリ」などでも有名な漫画家で、作者の史村翔氏は「北斗の拳」の原作者としても有名です。
 沖縄の米軍基地や尖閣問題、日米安全保障など現代の様々な問題をテーマとしており、なかなか読み応えがあっておすすめの一作です。
 ちなみに私はこの作品は電子書籍リーダー(Kindle)で読みました。旅行などの長距離移動のときに何冊も持ち運ばなくて済むのは大変便利ですね。